22349171_s

子どもの個性はさまざまです。

発達障害ではないものの、集団行動が苦手な子どももいます。

グループ活動にうまく参加できない子どもを見て、心配している方もいるでしょう。

本記事では、集団行動が苦手な子どもの特徴やその理由について解説し、保護者が心がけるべき対応を紹介します。

以下の情報を参考にすれば、集団行動が苦手な子どもに対する理解を深められるはずです。

 

そもそも発達障害とは

発達障害支援法で、発達障害は以下のように定義されています。

第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

e-GOV法令検索「発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)」
https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC1000000167

また、同法は、発達障害者を「発達障害がある者で発達障害および社会的障壁により日常生活、社会生活に制限を受けるもの」と定義しています(18歳未満を発達障害児)。

発達障害とは、脳の働きの違いによって行動やコミュニケーションに特徴が現れ、日常生活や社会生活に支障をきたす状態のことを指します。

 

発達障害ではないけれど集団行動が苦手な子の特徴とは

発達障害ではないものの、グループでの行動が苦手な子どももいます。

主な特徴は以下の通りです。

 

就学前

 

声掛けに反応しない

グループ行動が苦手な子どもは、周囲の声かけに反応しないことがあります。

主な理由として考えられるのが、ひとつのことに意識を集中してしまうことです。

他のことに熱中しているため、声が聞こえていないといえるでしょう。

また、声をかけられたことを理解していない可能性や反応の仕方がわからない可能性もあります。

子どもが声掛けを認識できるように、そっと近づいて、体に触れながら話しかけるとよいかもしれません。

 

他の子どもをたたいたりおもちゃを奪う

幼稚園や保育園で、友達や先生を叩いたり、友達のおもちゃを奪ったりすることもあります。

一見すると攻撃に見えますが、自分の気持ちを伝える方法がわからず、取った行動である可能性があります。

行動の背後には、一緒に遊びたい、おもちゃを貸してほしいなどの気持ちが隠れていることがあるのです。

子どもがお友達を叩いていると驚いてしまいますが、頭ごなしに叱らないほうがよいでしょう(暴力は制止する必要があります)。

子どもの話を聴いて、気持ちを理解するように努めることが大切です。

 

イベントに参加しない

歌、ダンス、運動など、集団で行うイベントに参加したがらないこともあります。

主な理由として考えられるのが、何をすればよいかわからないことです。

集団の中で適切に行動できる自信がないため、不安や緊張が強まります。

また、知らない環境や人が多い環境が苦手ということも考えられるでしょう。

全ての子どもがイベントを楽しみにしているわけではありません。

参加を渋る場合は無理強いせず、少しずつ環境に慣れるようサポートすることが重要です。

 

友達との関係性がうまく作れない

集団行動が苦手で、お友達をうまく作れないこともあります。

主な理由は、自分のペースを大切にしていることです。

決して悪い個性ではありませんが、自分のペースを大切にしすぎると、環境に馴染みにくくなってしまいます。

「一緒に遊ぶときは、お友達にも合わせようね」などと伝えると、お友達との距離を縮めやすくなる可能性があります。

 

集団に入れない

お友達の輪にうまく入れず、気がつくと1人で遊んでいることも少なくありません。

お友達との関係をうまく作れないことが主な原因といえるでしょう。

また、お友達への声掛けが苦手だったり、お友達に関心が無かったりすることも考えられます。

いつも1人で遊んでいると、集団行動のルールを身につける機会を失ってしまいます。

子どものペースに合わせ、保護者が友達の輪に入るサポートをすることが大切です。

 

就学後

 

グループ内で孤立しやすい

グループ行動が苦手な子どもは、就学後に孤立しやすくなります。主な原因は、グループ活動でうまく立ち回れないことです。

また、自然発生した子どもたちの仲間グループにも、加われないことが少なくありません。

したがって、1人で過ごす時間が長くなります。

学校内で孤立している場合は、先生や保護者のサポートを必要とすることもあるでしょう。

 

協力できない

お友達と一緒に行動することが難しいこともあります。

例えば、グループ内のルールが理解できないと、役割分担や共同作業をスムーズに進められません。

あるいは、コミュニケーションの取り方に個性があると、お友達と意思疎通をうまく図れません。

具体的には、意見を伝えられなかったり、意見を主張しすぎたりすることが考えられます。

いずれの場合も、友達と一緒に行動することが難しくなるでしょう。

協調性を育てるために、適切な働きかけが必要です。

 

先生の指示に従わない

集団行動が苦手な子どもの中には、先生の指示を無視してしまう子どももいます。

主な理由は、やるべきことがわからなかったり、内容を理解できなかったりすることです。

また、周囲に合わせることが難しいケースもあります。

苦手な環境や慣れない環境に入ると、不安や緊張が高まるため、このような傾向が強く現れます。

いずれにせよ、先生に反抗して指示を無視しているわけではありません。

周囲の大人が子どもの個性を理解しておくことが大切です。

 

集団行動が苦手と感じる理由

集団行動が苦手な理由は子どもによって異なります。以下に主な理由を解説します。

 

人と接するのが苦手

グループでの行動が苦手な理由として、お友達とうまくコミュニケーションを図れないことがあげられます。

意思疎通がうまくいかないと、グループのルールや役割を把握できません。

これらを理解しないまま、見様見真似で行動して、孤立してしまうなどが考えられます。

また、自然発生した仲間グループでは、ルールや役割が言語化されていません。

仲間内の「空気」を読むことが難しい子どももいるでしょう。

 

集団行動に慣れていない

集団での行動に慣れていないため、グループ活動が苦手と感じる子どももいます。

経験が不足していると、暗黙のルールを理解できないためです。

グループ内での適切な振る舞いがわからず不安が高まってしまいます。

一人っ子やお友達と遊んだ経験が少ない子どもなどに多い理由といえるでしょう。

お友達と交流する機会を増やすと、苦手意識を解消できることがあります。

 

マイペースで周りに合わせることが苦手

自分のペースを大切にしているため、集団行動が苦手と感じている子どももいます。

例えば、自分の興味を優先したい、自分のやり方で進めたいといった理由が考えられます。

素晴らしい個性ですが、集団に入ることでさまざまな摩擦が生じる場合があります。

具体的には、自分の興味より集団のルールを優先しなければならないなどが考えられます。

したがって、集団での行動を苦手と感じる子どもがいるのです。

 

集中力が高い

ひとつの物事に集中してしまうことも、集団行動を苦手と感じる理由です。

子どもの長所と考えられますが、状況によってはプラスに働かないことがあります。

例えば、グループ内で複数の役割を求められる場面では、うまく対応できないことがあります。

気がつくと、グループ内で孤立していたり、グループから取り残されていたりすることが考えられます。

 

自分に自信がない

自分に自信をもてないため、苦手意識をもつ子どももいます。

自信をもてないと、不安が先立つため、積極的に行動できません。

例えば「間違えると恥ずかしい」と考えて、グループ活動に関われないなどが考えられます。

あるいは、グループ活動に関わったものの、自分で判断できず、行動できなくなることもあるでしょう。

自分に対する自信も、集団行動の苦手意識に影響を与えます。

 

他の人に興味がない

周囲に興味や関心がないため、集団行動が苦手な子どももいます。

自分の興味を優先したり、集団行動の必要性を理解していなかったりすることが少なくありません。

したがって、先生の指示を無視して別のことをしたり、グループのメンバーから遅れてしまったりすることがあります。

 

聴覚過敏などの感覚過敏

聴覚過敏をはじめとする感覚過敏が原因で、グループでの行動を避けようとする子どももいます。

感覚過敏は五感の刺激を過剰に感じる状態、聴覚過敏は些細な音を耐えがたく感じる状態といえるでしょう。

例えば、聴覚過敏だと、周囲の音が邪魔で会話に集中できないことがあります。

したがって、さまざまな音が発生しやすいグループでの行動を避けようとするのです。

感覚過敏は、友達から理解されにくいと考えられています。

子どもが困っている場合は、保護者や先生が周囲の理解を促しましょう。

 

症状によっては発達障害の疑いを持つ

子どもの特性によっては、発達障害の可能性が疑われます。

ここでは、発達障害の診断などで使用される代表的な知能検査と発達検査を紹介します。

 

心理テストの種類

 

WISC-Ⅳ 知能検査

5歳0カ月から16歳11カ月の子どもを対象とする知能検査です。

15の下位検査(10の基本検査と5の補助検査)で構成されます。

具体的には以下の通りです。

【基本検査】

言語理解指標(VCI) 類似・単語・理解
知覚推理指標(PRI) 積木模様・絵の概念・行列推理
ワーキングメモリー指標(WMI) 数唱・語音整列
処理速度指標(PSI) 符号・記号探し

【補助検査】

言語理解指標(VCI) 知識・語の推理
知覚推理指標(PRI) 絵の完成
ワーキングメモリー指標(WMI) 算数
処理速度指標(PSI) 絵の末梢

WISC-Ⅳ 知能検査では、全体的な認知能力を示す全検査IQ(FSIQ)と4つの指標得点を算出します。

全体的な認知能力だけでなく、各指標の能力を詳しく知ることができます。

 

田中ビネー知能検査V

2歳から成人を対象とする知能検査です。

フランスの心理学者「アルフレッド・ビネー」らが開発したビネー検査を、日本の心理学者「田中寛一」が日本人向けにアレンジしたものといえるでしょう。

被検査者が2歳から13歳11か月の場合は、精神年齢(MA)と偏差知能指数(DIQ)を算出します(田中ビネー知能検査Ⅵ)。

偏差知能指数(DIQ)は、知能の発達状態を集団の中で相対的に評価する指標です。

年齢に応じた問題構成となっているため、同年代の子どもの発達と比較しやすいと考えられています。

日常生活に即した問題を採用して、被検査者の能力を十分に発揮させている点もポイントです。

実際の検査では、所定の手順で問題を提示し、被検査者の回答や反応などを観察します。

検査者の知識・技能によっては、分析的な診断を行うことも可能です。

 

新版K式発達検査

0歳~成人を対象とする発達検査です。

子どもの自然な行動を観察して、実際の年齢と発達年齢の差を評価します。

検査の領域は「姿勢・運動(P-M)」「認知・適応(C-A)」「言語・社会(L-S)」です。

具体的には、各項目を通過、不通過で判定して評価します。

保護者、本人からヒアリングした情報、言語反応、動作、感情・情緒などを記録、加味する点もポイントです。

検査の内容や順番は、被検査者の状態にあわせて選択します。

 

発達障害ではないけれど集団行動が苦手な子どもへの対応方法

発達障害ではないが集団行動が苦手な子どもに対して、保護者はどのように対応すれば良いのでしょうか。

ここからは、保護者が気をつけたいポイントを解説します。

 

どこまで指示を理解できるか

集団行動が苦手な子どもには、指示を理解できなかったり、理解に時間がかかる場合があります。

したがって、理解できる内容を把握しておくことが大切です。

具体的には、保護者が簡単な指示を出してみることが有効です。

指示通りに行動できる場合は内容を複雑にし、できない場合は簡単にすることで、理解の程度が確認できます。

また、子どもが理解しやすい指示の出し方も把握できるでしょう。

 

子どものペースに合わせる

子どものペースに合わせて対応することも重要です。

保護者が焦ると子どもに重圧がかかり、能力を発揮できなくなる恐れがあります。

子どもの成長速度に個人差がある点もポイントです。

同年代のお友達と同じことができるとは限りません。

一般的に、協調性が身につくのは5-6歳頃と考えられています。

場合によっては、子どもの成長を見守ることも重要です。

 

できたときはほめる

好ましい行動をとったときに褒めると、子どもの前向きな気持ちを引き出せます。

例えば、グループ活動に参加したときに「一生懸命頑張ったね」などと褒めると、子どもは自信をつけるでしょう。

反対に、叱ることはおすすめできません。

お友達と同じことができず落ち込んでいる子どもを、さらに傷つけてしまう恐れがあるためです。

上手くできなかった理由を優しく聞き、原因を探ることが大切です。

 

集団行動に慣れさせる

子どものペースでグループ活動に慣れさせることも大切です。

具体的には、家族で一緒に作業をする、自宅にお友達を招いて遊ぶなどが考えられます。

少人数・短時間から始め、徐々に人数と時間を増やしていきましょう。

これらの取り組みを通して、集団行動のルールを学び、自信をつけることができます。

 

集団行動が苦手な子どもをサポート

ここでは、発達障害ではないけれど集団行動が苦手な子どもについて解説しました。

集団行動が苦手な子どもは、声かけに反応しなかったり、グループ内で孤立したりすることがあります。

また、お友達とうまくコミュニケーションをとれないことや自分のペースを大切にしていることが少なくありません。

保護者や先生が適切にサポートすれば、子どもが集団に馴染む可能性が高まります。

周囲が子どもの個性を理解し、それに応じて対応することが重要です。

専門的な支援が必要な方は、不登校や発達障害の学習支援を行うアソマナ学園フリースクールにご相談ください。

子どもたちの一歩を全力で支援いたします。