不登校のお子さまの居場所として「適応指導教室」と「フリースクール」という選択肢があります。
しかし、それぞれどのような違いがあるのか迷われている方も多いのではないでしょうか。
両者は不登校の子どもたちをサポートする場という点では共通していますが、運営主体や目的、活動内容などに大きな違いがあります。
適切な選択をするためには、これらの違いを正確に理解することが大切です。
本記事では、適応指導教室の基本的な役割や活動内容を解説したうえで、フリースクールとのおもな違いを説明します。
ぜひお子さまに最適な居場所を見つけるための参考にしてください。
適応指導教室とは?
教育支援センター(適応指導教室)とは、不登校状態にある児童生徒を対象に、学校復帰や社会的自立を支援するための施設です。
基礎学力の補充や情緒の安定、集団生活への適応力を育む取り組みなど、さまざまなプログラムが用意されています。
文部科学省の調査では、全国の約63%の自治体に適応指導教室が設置されており、今後も設置を予定している自治体が増えている状況です。
少人数や個別指導の形式が多く、1人ひとりに合った学習支援やコミュニケーション支援を行いながら、学校や保護者と連携を取る仕組みが整えられています。
適応指導教室という名称で呼ばれていましたが、文部科学省の通知を受け、教育支援センターに変更されています。
適応指導教室の役割
不登校状態にある児童生徒が、社会的自立や学校復帰に向けて一歩ずつ成長できるようサポートする場です。
学習支援やコミュニケーション指導を行いながら、子どもの悩みや不安に寄り添い、自己肯定感の向上を図ります。
また、少人数や個別対応を採用することで、1人ひとりの学習ペースに合わせた柔軟な学びを提供できるのも特徴です。
定期的な面談やカウンセリングを通じて、保護者や在籍校との連携を密にすることで、生活リズムの改善やメンタル面のケアにも力を入れています。
総合的な支援を行うことで、子どもが主体的に「学校へ通ってみよう」と思えるきっかけをつくり、将来的な社会参加につなげていくことが期待されます。
適応指導教室の利用条件
適応指導教室を利用するためには、基本的に在籍校や教育委員会との相談が必要です。
自治体によって制度は異なりますが、多くの場合、不登校が一定期間続いている児童生徒がおもな対象となります。
利用にあたっては、在籍校の担任やカウンセラー、教育委員会の担当者などが集まり、子どもの状況や希望を踏まえながら決定する仕組みです。
また、利用できる期間や頻度も地域によって異なるため、事前に情報収集をすることが重要です。
希望者が多い地域では待機が発生する場合があり、早めの手続きを心がける必要があります。
加えて、利用に対する保護者の意思確認や、子ども本人が通うことへの納得感を得るための面談を行うケースもあります。
適応指導教室の活動内容
適応指導教室では、不登校や悩みを抱える生徒が学習面や対人関係で安心してステップを踏めるよう、多彩なプログラムを用意しています。
以下の4つについて、具体的な取り組みを見ていきましょう。
- 学習支援
- コミュニケーションの練習
- カウンセリング
- 学校との連携
詳しく解説します。
学習支援
適応指導教室では、生徒1人ひとりの学力や興味に合わせた個別指導や少人数授業を行い、学習の遅れを取り戻すサポートをしています。
オンライン教材やタブレット端末などを活用し、生徒が楽しみながら学べる環境を整えているケースも珍しくありません。
教科書の内容だけでなく、将来に役立つ実践的な学習も取り入れることで、生徒が前向きな気持ちを持つきっかけをつくるのが狙いです。
また、わからないところを即座に質問できる体制を整えることで、苦手意識を少しずつ解消し、自信を育てられます。
こうした学習支援を通じ、学校や社会に復帰した際にも困らない基礎力を築き、将来の選択肢を広げる土台となることが期待されます。
関連記事:不登校の勉強の遅れは取り戻せる!学習のポイントと7つの勉強法
コミュニケーションの練習
適応指導教室では学習面だけでなく、人との関わり方を学ぶ機会も重視しています。
たとえば、グループワークやディスカッションを取り入れ、お互いの意見を尊重しながら協力して課題を解決する方法を身につけさせるのです。
こうしたプログラムを通じて、生徒は自己表現のスキルだけでなく、相手の話に耳を傾ける姿勢や感情のコントロール方法も学べます。
また、適度なイベントや交流会を開催し、自然に友だち関係を築けるようサポートする施設もあります。
人間関係に苦手意識を持つ生徒でも少しずつ慣れていくことで自信を取り戻し、対人コミュニケーションの壁を乗り越えやすくなる点がメリットです。
関連記事:発達障害ではないけれど集団行動が苦手な子の特徴と意識したい対応
カウンセリング
不登校に至るまでには学習面の悩みだけでなく、家庭や友人関係など多角的な要因が絡んでいることが少なくありません。
適応指導教室では専門のカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが常駐し、心のケアに力を入れています。
カウンセリングでは、悩みの根本原因を一緒に探りながら、自己肯定感の向上やストレスの解消法を身につける手助けを行います。
定期的に面談を行うことで、生徒は自分の気持ちや行動を客観的に振り返る機会を得られ、次の一歩を踏み出す勇気を育めるでしょう。
保護者や家族とも連携してサポート計画を組み立てることで、家庭環境の改善にもつながり、不登校からの復帰をスムーズに進められる体制を整えます。
学校との連携
適応指導教室が目指す大きなゴールの1つは、生徒が再び学校へ通えるようになることです。
そのため、在籍校との密な連携を図りながら、生徒の出欠状況や学習進度、心理面の変化を共有します。
具体的には、教師やカウンセラーが在籍校と定期的に情報交換を行い、必要に応じて面談やケース会議を実施するケースが多いです。
こうした連携により、学校側も生徒の状況を的確に把握し、登校再開の際にスムーズにクラスへ復帰しやすいようサポートできます。
また、将来的に進学を検討している生徒にも一貫した支援を続けることで、学びを途絶えさせずに進路を模索できるのが大きなメリットです。
適応指導教室とフリースクールの違い
適応指導教室とフリースクールは、不登校の生徒を支える場として似ているようで、実は設置目的や利用条件などに違いがあります。
ここでは、以下6つを比較しましょう。
- 目的
- 対象者
- 審査の有無
- 費用
- 内容
- 学校との連携・出席日数
それぞれを把握することで、お子さまに合った学びの場を選ぶ際の参考になります。
目的
適応指導教室の大きな目的は、「学校復帰のサポート」です。
公立の教育機関として、不登校の生徒が再び学校へ通えるように心と学習の両面でバックアップを行います。
一方、フリースクールは学校以外での学びの場を提供し、「自分らしく成長する」ことを重視する傾向が強いです。
必ずしも学校復帰をゴールとせず、生徒が興味や関心を伸ばすための自由なプログラムを用意しています。
両者のスタンスは似ているようで、異なります。
適応指導教室は学校システムの一部という性質が強く、フリースクールは民間やNPOなど多様な団体によって運営される場合がほとんどです。
どのような未来を目指したいかによって、向いている場所は変わります。
対象者
適応指導教室は、「在籍校を持つ不登校の児童生徒」をおもな対象としています。
在籍している小・中学校や教育委員会と連携を取りながら利用を進めることが多く、学校へ復帰したいと考えている生徒にとくに適しています。
一方、フリースクールは年齢や学籍状況を限定しない場合が多く、さまざまな背景の子どもや若者が通うことが可能です。
中には、在籍校を退学や休学している生徒を受け入れるところもあり、特定の学校に所属しなくても受け入れてもらえる自由度が魅力です。
対象者に関して、適応指導教室のほうが公的な枠組みに沿った利用が前提となり、フリースクールはより幅広い層を受け入れやすいという違いがあります。
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審査の有無
適応指導教室を利用するには、教育委員会や在籍校との面談や相談を経て手続きを行います。
利用枠に限りがある場合、ある程度の優先順位や審査が行われるケースも。
しかし、多くは「不登校の状態である」ことが条件となるため、厳しい審査があるわけではありません。
一方、フリースクールに入学・通所する際は、独自の面談や見学が設定される場合がありますが、公的機関のような形式的な審査はほぼ行われません。
あくまで施設側の理念や方針に合っているか、また生徒本人や保護者が継続して通える環境が整っているかを確認するためのプロセスです。
そのため、選択肢としては比較的幅広く、気軽に問い合わせできるところが魅力といえます。
費用
適応指導教室はおもな公立の教育委員会が運営しているため、基本的に授業料は無料となることが多いです。
教材費や行事参加費など、多少の実費が発生することはありますが、原則として公的支援を受けながら活動している点が特徴です。
一方、フリースクールは民間運営であるため、月額1〜5万円程度の費用がかかります。
ただし、東京都など一部の自治体ではフリースクールに対する助成金制度があり、費用負担を軽減できます。
フリースクール検討の際は、運営団体や料金システム、利用可能な助成制度などを確認し、家庭状況と照らし合わせて選択することが大切です。
内容
適応指導教室では、学習支援やカウンセリング・学校との連携を中心に、不登校の生徒が安心して通えるように配慮しています。
目指すゴールが「学校復帰」なので、学校の授業内容に準じた学習プログラムや集団生活の練習が行われることが多いです。
一方、フリースクールは必ずしも学校のカリキュラムに縛られず、子どもの興味や適性に合わせた自由度の高い活動を提供しています。
プログラミングやアート・農業体験など、教科書以外の学びを重視するところもあり、生徒が主体的に学びを選択できるのが特徴です。
学校との連携・出席日数
適応指導教室は教育委員会が運営しているため、在籍校との連携がスムーズに進むケースが多く、生徒が通っている日数を出席扱いにすることも比較的容易です。
復帰プランを立てやすいため、早い段階で学校とのパイプを再構築し、将来的には教室へ戻るための準備が進めやすいというメリットがあります。
一方、フリースクールの場合、通学した日が在籍校で出席扱いになるには、2019年の文部科学省通知に基づき校長の判断が必要です。
手続きとして申請や活動証明書の提出などが求められることもあります。
この制度により、全国的にフリースクールでの学びが公的に認められるようになり、不登校児童生徒の選択肢が広がっています。
まとめ
適応指導教室とフリースクールは、それぞれが目指す目的や学びの内容、費用などに違いがあります。
お子さまに合った選択肢を見つけるうえで、自然体験を重視する「アソマナ学園」もご検討ください。
海の自然学校が前身で、東京都フリースクール等利用者支援事業(助成金)対象の認定フリースクールとして、安心できる居場所を提供しています。
ICT教材「すらら」やプログラミング学習など、遊びと学びが融合した独自のスタイルで、1人ひとりに寄り添ったサポートを行っています。