中学生が勉強しない理由の1つに、発達障害の可能性があげられます。
発達障害にはさまざまなタイプがあり、個々を理解することが大切です。
この記事では、発達障害のタイプ別に勉強を促すための方法と、発達障害の中学生に接する際の注意点を紹介します。
お子さんの学習に悩んでいる保護者や教育関係者の方は、ぜひ参考にしてください。
勉強しない中学生は発達障害の可能性がある?
発達障害には、ADHD(注意欠陥多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム障害)、学習障害(LD)などが含まれ、それぞれの特性が学習に影響することがあります。
ただし、すべての発達障害の子どもが勉強が苦手とは限りません。
それぞれの強みを活かした適切なサポートにより、学習成果を上げることが可能です。
また、文部科学省の調査によると、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒の割合が、増加していることが分かっています。
発達障害を抱える子どもが身近になる中、固定観念にとらわれることなく周囲が理解し、サポートすることが重要です。
出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)」
勉強しない中学生の発達障害タイプ別の特徴
ここでは、発達障害の代表的な6つのタイプの特徴を解説します。
- ADHD(不注意優勢型)
- ADHD(多動衝動優勢型)
- ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)
- ディスグラフィア(書字障害)
- ディスレクシア(読字障害)
- ディスカリキュア(算数障害)
それぞれ見ていきましょう。
ADHD(不注意優勢型)
不注意優勢型の中学生は、集中力を持続させることが難しく、注意散漫になりがちです。
以下に、不注意優勢型の特徴をまとめました。
シーン | 傾向 |
授業中 |
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宿題や課題 |
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その他 |
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そのため、課題を最後までやり遂げられず、多くの場合、学習の進捗が遅れてしまいます。
ADHD(多動衝動優勢型)
多動衝動優勢型の中学生は、じっとしていることが苦手で、落ち着きのなさや衝動的な行動が目立ちます。
以下に、多動衝動優勢型の特徴をまとめました。
シーン | 傾向 |
授業中 |
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衝動的な行動 |
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学習 |
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授業中に突然立ち上がって教室を歩き回ったり、先生の質問に対して考えずに答えてしまうことがあります。
そのため、周囲の理解が得られず、学習内容が定着しにくい傾向があります。
ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)
ASDの中学生は、多くの場合、社会性やコミュニケーションに困難を抱えています。
特定の興味や関心に対して集中力が突き抜けて高い一方、興味のない分野には全く関心を示さないことが特徴です。
また、抽象的な概念や曖昧な指示に対して理解しづらく、文章問題や比喩表現の解釈に苦労するため、特定の科目で成績が極端に偏りがちです。
たとえば、数学には優れた能力を発揮するものの、国語の文章問題には全くやる気を出さないことがあげられます。
ディスグラフィア(書字障害)
ディスグラフィアは、文字を書くことが困難な発達障害です。
この障害を持つ中学生は、手書きの文字が不明瞭であったり、スペルミスが頻繁に見られたりしがちです。
書くという行為自体にストレスを感じるため、ノートを取ることや、テストで記述問題に答えることが大きな負担となります。
たとえば、黒板の文字を写すのに時間がかかり、授業の内容についていけなくなることがあります。
ディスレクシア(読字障害)
ディスレクシアは、文字や文章を読むことを難しく感じます。
文字を正しく認識できなかったり、単語や文章を読む速度が遅かったりすることが特徴です。
読書や教科書の読み取りが苦手なため、学習に対するモチベーションが低下しやすく、結果的に勉強を避ける傾向があります。
とくに、国語や社会などの大量の文章を読む必要がある科目で苦労することが多いです。
その結果、テストの成績が伸びず学習途中でつまずいてしまいます。
ディスカリキュア(算数障害)
ディスカリキュアは、数学的な概念の理解や計算が難しいことが特徴です。
基本的な四則演算でも間違いが多く、数字の並びや位取りを正確に理解しづらい傾向があります。
また、図形の概念や数学的な記号の意味を把握できないことも。
これにより、数学の授業がストレスの原因となり、勉強のやる気を失います。
勉強しない中学生に勉強させるには?発達障害タイプ別の対策
発達障害があっても、勉強に対する意欲を引き出すことは可能です。
ここでは、タイプ別に効果的な対策方法を紹介します。
- ADHD(不注意優勢型)
- ADHD(多動衝動優勢型)
- ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)
- ディスグラフィア(書字障害)
- ディスレクシア(読字障害)
- ディスカリキュア(算数障害)
それぞれ見ていきましょう。
関連記事:不登校でも中学受験できる?理由を解説
ADHD(不注意優勢型)
不注意優勢型の中学生には、集中力を維持しやすい環境を整えることが重要です。
静かで整理された学習空間を用意し、視覚的な手がかりを活用すると効果的です。
以下に、不注意優勢型の対策をまとめました。
環境整備 |
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学習方法 |
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教材の工夫 | 興味を引く教材や実践的な学習方法を採り入れる |
たとえば、タイマーを使って25分間集中して勉強し、その後5分間の休憩を取る「ポモドーロテクニック」を活用することで、集中力を維持しやすくなります。
ADHD(多動衝動優勢型)
多動衝動優勢型の中学生には、体を動かす機会を採り入れた学習方法が効果的です。
以下に、多動衝動優勢型の対策をまとめました。
学習環境 |
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学習方法 |
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教材の工夫 |
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たとえば、学習時間を10分に設定し、10分間集中して取り組んだあとに短い休憩を挟むことで、集中力を高められるでしょう。
ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)
ASDの中学生には、予測可能で一貫性のあるルーティンを作ることが重要です。
以下に、ASDの対策をまとめました。
ルーティンの設定 |
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視覚的サポート |
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教材の工夫 |
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たとえば、毎日決まった時間に勉強する習慣をつけることで、安心感を持たせられます。
ディスグラフィア(書字障害)
ディスグラフィアの中学生には、書くことの負担を軽減する工夫が必要です。
以下に、ディスグラフィアの対策をまとめました。
ツールの活用 |
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書く量の調整 |
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スキル向上 | ペン操作練習やタイピング練習 |
タブレットを使ってノートを取ることで書く負担が減り、学習に集中しやすくなるため、ぜひ採り入れてみましょう。
ディスレクシア(読字障害)
ディスレクシアの中学生には、読むことの負担を減らす支援が求められます。
以下に、ディスレクシアの対策をまとめました。
ツールの活用 |
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視覚的サポート |
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段階的なアプローチ | 短い文章から始め、少しずつ長文に挑戦 |
たとえば、音声読み上げソフトを使って教科書の内容を聞きながら学習できると、理解を深められるためおすすめです。
ディスカリキュア(算数障害)
ディスカリキュアは、具体的な物を使った学習が効果的です。
以下に、ディスカリキュアの対策をまとめました。
具体的な教材の使用 |
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サポート方法 |
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成功体験の積み重ね |
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たとえば、数ブロックを使って計算の過程を視覚的に示すことで、概念の理解を深められるでしょう。
勉強しない中学生に接するときの注意点
発達障害を持つ子どもが勉強する際は、周囲の理解と配慮が求められます。ここでは、注意点を5つ解説します。
- できないことを叱らない
- 無理に勉強させようとしない
- 周りと比較しない
- 小さな成長でも認めてあげる
- 子どもの特性を理解する
それぞれ見ていきましょう。
関連記事:中学生の勉強の遅れを取り戻すには?効果的な学習法を紹介
注意点①できないことを叱らない
叱ることで自己評価が低下し、さらに勉強への意欲が減退してしまいます。
子どもは自分なりに努力しているにもかかわらず、うまくいかないことでストレスを感じることが多いからです。
そのため、本人が以下のような前向きになれるアプローチが大切です。
- できないことの原因を一緒に考える
- 対策を立てる
- 小さな成功体験を積み重ねる
たとえば、数学の問題が解けない場合は何が理解できていないのか一緒に確認し、少しずつ解決策を見つけることで、子どもに意欲を持たせられます。
注意点②無理に勉強させようとしない
過度なストレスを感じることで、学習に対する拒否反応が強まる傾向にあります。
そのため、以下のような勉強できる環境を整えてあげることが大切です。
- 子どもの特性や興味を理解する
- 楽しみながら学べる環境を整える
- 自主的に勉強したいと思える工夫をする
たとえば、好きな科目や興味のあるトピックから始めると、子どもの学習意欲を引き出しやすいでしょう。
注意点③周りと比較しない
学校や家庭でほかの生徒や兄弟姉妹と比較されると、子どもの自己肯定感を低下させ、勉強へのモチベーションを損なう原因になります。
そのため、個別の評価を大切にしてあげましょう。
- 以前と比べてできるようになったことを評価する
- 努力している点を具体的に認める
- 個性や長所を伸ばすサポートをする
たとえば、「前回よりも問題を多く解けたね」といった具体的な声かけをすることで、子どもの自信が育ちます。
注意点④小さな成長でも認めてあげる
子どもの自信と意欲を高めるためには、小さな進歩や努力を見逃さずに評価し、励ますことが大切です。
責めるのではなく褒めることに重点をおきましょう。
- 小さな進歩を見逃さずに褒める
- 努力を認める
- 次のステップに進むための励ましをする
たとえば、テストの点数が10点から25点に上がった場合、「15点も伸びたね!頑張ったね」と具体的に褒めることで、次のレベルに向けて意欲を出してくれるでしょう。
注意点⑤子どもの特性を理解する
子どもの行動や学習の困難さを理解し、適切な対応をすることが重要です。
たとえば、以下を心がけてください。
- 発達障害に関する正しい知識を身につける
- 子どもの特性を理解する
- 専門家のアドバイスを受ける
子どもの行動の背景にある要因を理解し、適切に対応するために関連書籍を読んだり、専門家のアドバイスを受けたりすることもおすすめです。
まとめ
発達障害には6つのタイプがあり、それぞれに適した学習環境や方法を整えることが重要です。
もし、お子さんの不登校や発達障害に関するお悩みがある場合は、アソマナ学園にご相談ください。
アソマナ学園では、個別対応や最新の脳科学に基づいたカリキュラムを提供しており、教育相談やLINEでのカウンセリングも行っています。
子どもたちが自信を持って学校生活を送れるように、ぜひお手伝いさせてください。