アソマナ学園への期待

社会のお役に立てる教育事業であると期待

米国では1950年代よりインテグレーション教育(統合教育)からインクルージョン教育(包括教育)への検討が行われ、デンマークから始まった「ノーマライゼーション」の理念が、それらを後押しするように浸透しました。英国では1981年に教育法が改正され、障害種別による分類を廃して、個々の子どもの「特別な教育的ニーズ(Special Educational Needs : SEN)」という概念が導入され、統合された環境での適切な教育が目指されるようになりました。一方、我が国では2007年4 月から、「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられましたが、子ども一人一人のニーズに応じた教育援助のあり方は、まだまだ模索中であると言えます。

我が国では、ここ数十年で核家族化が進行するとともに少子高齢化も進んできました。共働き世帯が専業主婦世帯を上回るという状況も生まれ、現在では保育所等の子どもを預かる施設やサービスを必要とする保護者が増加しています。行政も現状に対処すべく様々な施策に取り組んでいますが、決して十分であるとは言えません。なかでも、不登校や障害を持つ子どもたちへの療育や自立のための支援は、重要であるとの認識はあるものの、残念ながら現状に見合った対応のできる状況には至っていないというのが実情です。特別な支援を要する子どもたちには、「学び」のペースの個人差が大きく存在しますが、学ぶ環境を整えることができれば、各自のペースで「学び」の向上は可能です。

アソマナでは、アソび(運動)とマナび(勉強)を通して“未来の自分創り”ができるよう、自ら課題と向き合い、自ら進んで勉強する「自立学習」を目指しているとお聴きしています。すべての子どもたちの可能性を見出せるよう、特別支援教育を補完する機会が提供されることは、社会のお役に立てる教育事業であると期待しています。

岡山大学名誉教授 三浦孝仁